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特集


ひらめきの月曜日
 
チャーハン専門店をゆく

店名よりコピーが目立つ
食べれる店

フライドライスだもの

その店は西新宿にあった。店の名前は「Tommy's Fried Rice」。いきなり横文字登場である。

店の前のノボリや貼り紙には「これでもか」とチャーハンの文字が並んでいるが、これはよほどチャーハンに自信があるのか、それとも「フライドライス」という英語の店名にしたことへの補足の意味か。まぁ、おいしければなんでもいいのですが。

日曜の午後、当サイトのライターでもあり友人の大塚さんを誘って出掛けてみたところ、なんと定休日だった。

「このへんの勤め人やら学生をターゲットにした店なのかなぁ」
「そうねぇ。チャーハンって、昼休みにパッと食べるってイメージ、あるかも」

たしかに日曜日の西新宿は閑散としていて人通りも少ない。というか、取材は下調べをきちんとしたい。大塚さん、ごめん。

わかったわかった、と言いたくなる
お客さんには、若い女性も多かったです

翌日、1人で店を訪れた。地下にあるお店は、まるで小洒落たカフェのような雰囲気。白い壁にはプロジェクターの映像が延々と映し出され、なるほどこれは「フライドライス」だ。とてもチャーハンの店とは思えない。

きっと女性誌が「一人でも安心して入れます」と推奨するお店というのは、こんな店のことを言うのだろうな、と思った。


チャーハンメニューは計11種類

基本形であるらしい「トミーズ」というチャーハンをベースに、トッピングでいろいろな具が乗ることで「世界の」を表しているようだ。イタリアンならトマトとか、USチャーハンならバーベキューとか。沖縄チャンプルーという名前の物には、ゴーヤ炒めが付いているらしい。なるほど。

ここは無難に「海鮮中華」を選んでみた。


海鮮のあんかけがかかった、目にも満足な綺麗なチャーハン

次回はマイスプーン持参で訪れたい

店内の雰囲気と同じく、皿の上も普通のチャーハンとは一線を画している。これはカフェ・チャーハンというべきか。

まわりに敷かれたレタスが口の中をサッパリとさせて、…うん、おいしい。おいしいチャーハンだ。

木のスプーンで食べたのだが、これが私にはどうにも合わず、口の端からチャーハンがボロボロとこぼれる。つい目がレンゲを探してしまったが、ここにそんなものがあるはずもない。最後は仕方なく、箸で食べた。


帰るべき場所

店を出て、新宿駅まで歩く途中、普通の中華料理屋さんの前を通った。
床が油でツルツル滑るような、客も従業員も14型の小さなテレビ画面を凝視しているような、ごくごく普通の、そんな店。

ショーケースをのぞくと、グリーンピースが乗ったおなじみのチャーハンのサンプルが見える。

ああ、なんだか、とってもおいしそうに見える。あちこちのチャーハンを食べてきたけど、やっぱり基本はコレだよなぁ…。ものすごく安心するよなぁ…。


なぜかホッとするサンプル
気がつけば入店してました

本当に「あっ」というまに出てきた

ゴハンがパラパラしてるわけでも、特別すごい具が入っているわけでもない、日本中どこにでもあるような、ごくごく普通のチャーハン。

さっきの店に較べておいしいか、と聞かれたら、いいや、と答えるかもしれない。でも、私はこれが好きだ。

さすがにお腹はいっぱいだけど、やっと「満たされた」と思った。

幸せの青いチャーハン(青くないけど)

チャーハン専門店のチャーハンは、さすがに感心するほどおいしかった。どこもレベルが高かったです。はい。

でも、チャーハン専門店に行かなくても、おいしいチャーハンは食べられる。それは、あなたの住む小さな中華料理屋で、職場近くのちょっとお高い中国料理店で。お母さんが土曜の昼に決まって作る、カマボコの入ったチャーハンだって捨てがたい。

チャーハン専門店がほとんどないのは、逆にあっちこっちにチャーハンが溢れているせいかもしれない。そんなことを思った。

理想のチャーハンを求めて、鼻息荒く店を回ってみたが、結局幸せは身近なところにあるのかもしれませんね。


 

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