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特集


フェティッシュの火曜日
 
わたらせ渓谷をお座敷列車が走る

11時50分・神戸駅到着

神戸駅のホームには、かつて使われていた車両を利用したレストランがある。そこで調製されたお弁当を車内に運んでの昼食となった。


レストラン清流全景。
弁当持って走るスタッフの方、ご苦労様です。

以前読んだ東海林さだおさんのエッセイの影響で、私は車内で弁当を広げる時は、必ず 「列車が動き出してから」 と決めている。「流れる風景付き」 の弁当は、なぜあんなにおいしいんだろう。

ちなみに、帰省するときも必ず浅草の松屋で 「崎陽軒のシウマイ」 を買ってしまうのだが、そんな小さな食イベントでも必ず 「食べ始めるのは隅田川を越えてから」 と自分なりの規律を設けている。

こういうことが、「年をとる」 ということなのだろう。


お弁当はボリュームもあり、じゅうぶんおいしかったです。
食べ始めたらトンネルに入ってしまったのでしばし待つ。しかし全長5.2kmの草木トンネルだった・・・。

この旅は足尾駅が終着なのだが、途中の駅で小停止することがあり、その駅々がなかなかに個性的で、思わず降りてみたくなるところばかりだ。

沢入駅には 「あじさい園」 が広がっていた。満開のあじさいが車窓からすぐ近くに見える。当日はちょっと曇り気味の天気だったが、あじさいには曇りの日がよく似合うのだなあ。


あじさいの園を行く、ベレー帽・赤ジャケットのしゃれたおじさん。後に(次ページで)再会することとなる。

12時46分、足尾駅に到着。足尾といえば日本一の銅産出量を誇っていた足尾銅山が有名だが、1973年に銅山は閉山。現在は隣の通洞(つうどう)駅近辺の観光施設で、廃坑をトロッコでまわって見学はできる。

ここ足尾は、銅山の繁栄した時代のにぎわいをしのぶ建物や廃墟、施設がいたるところにある。到着後、私たちはスタッフの用意してくれたいくつかのコースの中から選び、足尾の町を散策することにした。


駅に降り立つ。のびていく線路を見ると、田舎の夏休みだなあと思う。
足尾駅全景。駅前に店は1件のみ。

このイベントのために出店してくれた、焼きまんじゅう屋さん。


焼きまんじゅう。群馬県以外の方には何のことかサッパリという食べ物だろうから補足。あんのないまんじゅう(よってとても軽い)を4個くらいづつ竹串に刺して、甘めの味噌を塗ってこんがり焼いたのが「焼きまんじゅう」。群馬ではどこでもあるのが当たり前、しかし県を1歩出れば見かけることさえ困難という、群馬県民のアイデンティティに重大に関わるまんじゅうである。

少なくとも私は、群馬を出て以来「焼きまんじゅう」という言葉が他人に通じたことはない。

「焼きまんじゅうって何?」と身近な群馬県人に聞いてみよう。きっとナーバスな反応が返ってくると思う。


森高千里が歌った「渡良瀬橋」。その「渡良瀬」とは渡良瀬川のことで、ここが源流。

とてもここが、大正初期には県内で宇都宮に次いで2位の人口を誇ったとか、足尾銅山経営者の邸宅での園遊会ではカートいっぱいのチョコレートが配られたとか、そのような場所とは思えず、嘘のような山間の静けさだ。    

ボーッと歩きながらその当時を想像してみたのだが、まったくイメージがわかない。こう考えること自体が、何かのイベントのような、わくわくするようなちょっとした興奮を覚える。    

そして、乗車の時刻が近づいてきた。まったく銀河鉄道999の旅のようだ。パスポート盗まれたところで、当日のみ有効の、わたけい だけ乗り放題なところが違うが。


山肌の、すすけた精錬所の迫力。

見ていると吸い込まれそうになる廃墟。

 

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