常連客が現れた
常連客の男性は、ママと同じ熊本県の出身で県人会の仲間でもあるらしい。
「あんた県人会に全然来ないし」
と責めるママに男性は苦笑い。しばらく二人は熊本弁で近況を話していた。
しばらく一人ぼっち状態に陥ってしまう。
帰りたい衝動に駆られるが、ここで帰ってしまったら元も子もない。この男性と仲良くならなくては。
話しかけるタイミングを伺っていると、男性の方から僕に声をかけてきた。
「この店のママは最高です」
男性はそう言うと僕に敬礼した。
何で敬礼なのか、良く分からなかったが話し掛けてくれたので僕にとっては好都合だった。
そこからその男性がママの半生を語り始めた。昔のテレビ番組「知ってるつもり?」風にまとめると以下の様になる。
・'60年代…聡明期。熊本県天草で生まれ育ち、若くして結婚。2児を授かるが夫の浮気が原因で離婚。
・'70年代後半〜…転換期。全てをリスタートさせる為、岡山に引っ越す。4年のOL期を経てシャングリラ設立。
・'80年代前半〜…発展期。シャングリラ大繁盛。数名の女性を使って連夜満席。
・'90年代中盤以降…円熟期。バブルの崩壊とともにお店の規模を縮小。現在に至るまでママ一人でお店を切り盛りしている。
「本当にここのママは素敵です」
男性はもう1回僕に敬礼をした。
男性との話も弾み、いい感じで盛り上がって来た。
ここで僕は更に男性との距離を近づける為、一曲歌う事にした。酒と歌で友情関係を育もうという作戦だ。
曲名は「勝手にしやがれ」。
男性は喜んで手拍子を入れてくれた。 |