本題に入ります
「それじゃ、そろそろカイト始めますか。」
金城さんはようやくカイトを竹刀袋から取り出した。よかった、僕は本当に今日はポイで終わりだと思っていた。
スポーツカイトは組み立てると戦闘機みたいな格好をしていた。子供の頃飛ばしたゲイラカイトとはずいぶん違う。骨組みはグラスファイバーで出来ていて軽くて丈夫。このカイトは小さいものらしく、大きなやつだと2メートル以上あるという。
「いい風出てきましたね」
金城さんが両手に持ったラインを大きく後ろに引っ張ると、カイトはビビビッとすごい音をたてながらほぼ垂直にテイクオフした。本当に戦闘機みたいだ。
金城さんの巧みなラインさばきでカイトは大空を自在に飛び回る。ゲイラカイトとの違いは上達すると思い通りにカイトを操れるところだ、それもかなりのスピードで。
実はこの取材、カイトを習得しようというのは建前で、本当はスポーツカイトの破壊力を体感しよう、という筋で考えていた。頭に乗せたりんごをカイトで打ち落としてもらおうと思っていたのだ。
しかし条件にもよるが、カイトは100キロ近くのスピードで飛んでくる。アメリカの警官がスピードガンで測ったら170キロ出ていた、という話もある。グラスファイバーでできた鋭角の物体がそんな速さで飛んでくるのだ、へたしたら刺さる。安全を優先し、りんごはやめておくことにした。
で、どうしよう
僕もカイトを借りて飛ばしてみたのだけど、どうしても低いところで急旋回して地面に刺さってしまう。風と戯れるどころじゃない。ポイの練習が全く生きないということもわかった。
とにかく一朝一夕にマスターするのは無理っぽい。もしかしたらかなり練習しないと上達しないんじゃないか。りんごも打ち落とさなかったし、どうやってこの企画を収束させようか。