がんばれがんばれ自分
正直言ってもううんざりなのだが、夢の世界の住人としてはそんなことを口にするわけにはいかない。いつの間にかガマン大会と化してきていることは心の中でごまかし、風船をひたすら膨らませる。
ぼく、がんばったんだよ
いい感じで充満したきた。天井まで届いて身動きが取れないくらいになれればとも思っていたのだが、用意しておいた風船が尽きたのでここまでとしたい。
すでに追加を買いに行く気力と体力は尽き果てていた。心はもうずい分前に満たされている。
もうやめていいんだよ
近所の人が通りかかったら、見て見ぬふりをしてくれるレベルにまで到達したとは思う。右の写真では風船がひしめく合間からまだ膨らませている自分が見えるが、もう戦いは終わったんだと告げてあげたい。
向こう側へと突き抜けろ
引き続き夢の第二章、まだあるのかよと思う方もいるかもしれないが、風船を満たした四畳半の部屋は、引き戸で仕切ることのできる六畳間とつながっている。
その扉を解き放ち、決壊させてみたいのだ。さあ、ドリームゲートが今開かれるのだ。
やった、イメージ通りの流入だ。ふわふわとしつつも、ドワーッとなだれ込んでくる。ここまで苦労したかいがあったなあ。こんなに笑った自分って、いつ以来だろう。
「がんばれば夢は叶う」──今まで歌や何かでそんなフレーズを聞かされるたびに、ひねくれては腐っていた自分。
きっとそれは、夢を実際に叶えた者だけが言える言葉でもあるのだろう。さあ、今こそあの頃のすさんでた自分にさよならを告げるときだ。もう一度言う、がんばれは夢は叶うのだ。
ひとしきり遊んだあと、改めて部屋の状況を見てみる。風船が幾重にも折り重なって広がっている。
まだまだ続くドリームタイム。イスの上に立って構えてみる、不思議とこれからしようとしていることに対する恐怖は湧いてこない。
ばかげていると言われてもいい。夢とはしばしばそういうものでもあるからだ。次ページではさすがにここまでできないという方でも、手軽にバルーンワールドを楽しめる提案をしてみたい。