ラストソーセージに全てを賭けろ
おしゃれな雰囲気も漂うデンパークだったが、ソーセージバイキングの張り紙はこのテンション。「昨年大好評」「グレードアップ」といった文字列が、見る者を気持ちよく煽ってくれる。
書体もプリプリしたソーセージにふさわしいポップ体。気分を盛り上げるナビゲートがうれしい。では店内に入ろう。
バイキングのスタイルは、ソーセージワゴンにあるものを自分で取ってくる方式。そのワゴンが過剰なまでにライトアップされていて、その輝きに遠目からだとソーセージの姿が見えない。
説明には手びねりや県産肉100%のことが書かれていて、こういう外堀でも来訪者の気持ちを盛り上げる演出を忘れていない。そして「食べ残し注意!!」の赤字が、浮かれる心をいさめてくれる。
そしてついにソーセージとご対面。ラインナップは右から、あらびき・チョリソー・フランク・ガーリック・チーズインの5種類だ。文句のつけようがないバリエーション。テクスチャーのプリプリ感も半端ではない。
他にもご飯やサラダなどがあるが、メインのおかずはあくまでソーセージのみ。気持ちにブレが生じる隙がない。
理想的なスタイルだ。旅路の果てに目指した天竺にたどり着いた。これで1500円は安い。
店員さんに「どれが一番人気ですか?」と聞くと、ちょっと困ったような顔で「あらびき、ですかね…」と答えてくれた。バカな質問をした。かわいいソーセージたちに順位をつけるようなことを聞いた自分を反省した。
みんなの共有財産としてのソーセージワゴンから、おごそかにマイソーセージを拝借。テーブルにあるグリルの火力が強いためにまさにソーセージは直火焼き。
それゆえ、かじったときの香ばしさが素晴らしい。もちろん味の面でも、そのルックスが示すところを裏切ることがない。基礎体力がしっかりしている上に、種類ごとの個性があるのも楽しい。パリッときて、ジュワー。ソーセージの表現は、結局のところそういう事に尽きる。
自分の中の「住みたい街ランキング」で、安城市が急上昇だ。もちろん、仕事や転居のことを考えるとなかなか実現できないことはわかっている。目の前のソーセージを見るにつけても、それがもどかしい。
ふるさとは遠きにありて思うもの。自分にそう言い聞かせながら、ネクストソーセージをかじる。ソーセージでよみがえる室生犀星。ソーセージの食べ過ぎでいよいよ言ってることがおかしくなってきた。
ついついソーセージのことばかり考えてしまいがちだが、野菜と一緒に焼くことでソーセージのスター性が前に出てくる。みんなはひとりのために、ひとりはみんなのために、ということなのだろう。
ソーセージをたくさん食べると、よくわからないことを言い出すようになる。今回の試みでわかったのはそういうことだ。
あれだけ食べたのに、翌日ホテルの朝食バイキングでまたソーセージに手を伸ばす。自分が抱える欲望の無限性にも、期せずして気付かされた。
それでも、現実的に到達可能な楽園としてのソーセージ食べ放題の魅力は伝わっただろうか。これからもネバーエンディングソーセージを見かけたら、身を投じてみたいと思う。