デイリーポータルZロゴ
このサイトについて

特集


ひらめきの月曜日
 
吹きだしでしゃべる

感動を吹き出しで伝える

観光船、ロイヤルウィングは船上レストランといったおもむきの船だ。乗船料さえ払えば飲食をしなくても遊覧を楽しめる。

デッキにあがると、思いのほか太陽の光であたたかい。目の前には海がひろがる。おお! この感動を吹き出そうじゃないか。

さんさんと降り注ぐ太陽、そして海!

ルールとして、ある程度の日常会話は普通に喋ってよし、ただし、感動などを伝える場合は必ず吹き出しを使うこととした。

汽笛を上げて船はゆく。早速この気持ちを吹き出しにして伝えようかと紙を手に取った、そのとき。

乙幡「あ!」
古賀「え?」
乙幡「吹き出しで伝えます、紙! 紙!」

何かを見つけたらしい乙幡さん

何かいそぎの案件らしい。慌てて紙やペンなど一式手渡す。乙幡さんは風にあおられながら至急はさみを動かし始めた。


紙を切って… 竹ひごを裏につけて… 文字をかいて…

ああ、もどかしい! 思いのほか時間がかかる。様子を見守る古賀も手持ち無沙汰だ。そして、完成。

伝えたいこととは何だったのか。

え、どこ? あれ?

乙幡「うそー、通りすぎちゃいましたよ! 今変な船がそこ通ったんですよー」
古賀「えーーー。見逃しました……」

……どんまい、である。ライブ感が重要とはいえ、手作りしなくてはならないため吹き出しにはタイムラグが生じることを覚悟しなくては。

そこへ、横浜名物あの橋が迫ってきた。

あ、あの有名な橋!

このときめきを吹き出しで! いそいで!


早く切って!でも凝った吹き出しを! 持ちやすいように竹ひごも固定!まだ間に合う! ああ〜〜〜〜 

強風にあおられ、いちど吹き出しが飛ばされかけたため、また時間を食ってしまった。

「ベイブリッジ、くぐりますよ!!」と伝えたかったのに、吹き出しができたのは、完全にくぐり終わったあとであった。吹き出しも微妙に修正。

何か間に合わなくなるような恐れのある、タイムリーな発言にこのリアルタイム吹き出しは向かないことが分かった。

静物について吹き出そう

船に乗っているのに動的なものについては喋れない。喋れるのは静物についてのみだ。しばらく乙幡・古賀 間に沈黙が 流れた。

この状態に風穴をあけるべく、売店でコーヒーを買って一休みすることにした。フードメニューもあったので「串刺しフランクフルト」を頼む。

ややあって、テーブルへ到着

乙幡「おおお……」

感動はすべて吹き出しにしなければならないルール。乙幡さんが厳かに、しかし気合いを込めて凝った吹き出しを切り始めた。

冷めちゃうといけないんで、すんませんが、お先にいただいちゃいますね。


「がぶ」 「あ!」 おのれ……

乙幡「もー! ひどいじゃないですか、先食べちゃって」

という乙幡さんが作ったのは、気合いの入ったギザギザ吹き出しの「わ〜おいしそう」であった。最後の「う」を書いている間に古賀が食べ始めたので文字が幽霊のようになっている。

す、すみません……

ふたりでこの吹き出し使って“わ〜おいしそう”ってやるべきだったのに、古賀がフライングする結果に。

吹き出しに必要なのはライブ感。ここまで分かったのはよかったが、どうもうまくいかない。

乙幡さんがまた工作用紙を1枚手にすると、何か吹き出しではないものを作り始めた。

乙幡「もう、こんな感じですなあ」

それはマンガで、なんか上手くいかないときやモヤモヤしているときによく出るマーク。確かに今の状況はそんな感じだ。

そんなとき、古賀にある名案が浮かんだのだった。


自由に書いたり消したりできる吹き出しがあればいいんじゃないか?


 

▲トップに戻る特集記事いちらんへ

個人情報保護ポリシー
© DailyPortalZ Inc. All Rights Reserved.